図書館。

面白い。内容が濃すぎてヤバい。
テーマは、 「ものつくり神話」の批判。
ものつくり神話の説明と、その結論にたどり着くまでの過程が凄い情報量でお腹いっぱい。
いい意味で濃い。凄い理論武装。

・技術の歴史
技術の軸足がハードからソフトへ移ることを、世の中では「IT(情報技術)化」 と呼ぶことが多い。(中略) ハードからソフトへの技術の軸足移動は、もっと深いところで起こっている現代技術の地殻変動の一つのあらわれである。
この地殻変動の様相を技術の一番深い水脈まで掘り下げ、百年を越える技術の長期のトレンドでとらえてその本質を明らかにすることが、本書の目的のひとつである。

まずは技術の歴史。日本は、理論とシステムとソフトウェアという3つが主軸になった第三の科学革命から置いてきぼりになる。匠の技が好きすぎて考えが変えられなかった。

・「普遍化」に乗り遅れた

・「理論」を軽視する工学研究

数学の停滞
理系離れは指摘するのに数学離れは放置。

一度通して読むとこの本の序章がいかにコンパクトに全体をまとめているかが分かる。
著者は論文執筆が沢山ある制御工学の教授。流石のまとめ方だ。
本文中も読者のことを配慮した「繰り返し述べたい」とか、「前の図表と対比されたい」とかがちょこちょこ出てきて読みやすい。引用文献が70件近く事細かに書かれている論文スタイルなのも読みやすさアップ。
というかこの辺は内容が面白かったという感想からくるハロー効果だな。なんでも好意的にとらえてしまう。罠だ。

一章は歴史
・普遍性
技術が普遍性を求めてきたこと、求めざるを得ないことが、この章で述べたいことである。普遍性といえば難しく聞こえるかもしれないが、要するに一定の知識さえ身につければ誰でも理解出来、望めば誰でも使うことの出来るような性質のことである。
匠の技の対極にあるもの、程度の理解でそんなに外してないと思う。

・科学と技術
科学は自然に普遍性を求める。
技術は論理に普遍性を求める。
科学と技術はバラバラ。

・科学革命
第一の科学革命は、言うまでもなくガリレオ、ニュートンらによる近代科学の確立である。
第二の科学革命は、自然を対象としていた科学が、技術のもたらすあたらしい現象の解明に使われるようになったこと。
フランスの、エコール・ポリテクニクという1794年設立の軍学校が第二の科学革命の起源。
国家プロジェクトとして科学と技術を組み合わせた学校。工学教育のモデル。

・品質管理、制御、フィードバック
第二の科学革命は大量生産を生み出した。大量生産では問題が起きた。「効率よくつくれないだろうか」って感じ。

・第三の科学革命
人工物を対象とする科学。造語?1930-1950年くらいの間に確立された科学。
制御工学、オペレーションズ・リサーチ、ネットワーク理論、ノイマン型計算機、シャノンの通信理論、ウィーナーのサイバネティックス。

道具

(産業革命)

機械

(第三の科学革命)

システム


二章は太平洋戦争の敗因分析
要約すると、
相手国は第三の科学革命を活用。
日本は第二の科学革命を活用。負けた。

・仮説 日本の伝統技術
機械を道具化する

「 道具 」
↓↑
(産業革命) (日本の伝統技術)
↓↑
「 機械 」


・武器の質的な差
量的ではないという注釈がある。
例えばレーダー。
アメリカ軍:レーダー搭載
日本軍:レーダー非搭載

・規格化・互換化
アメリカ軍:陸海空共用の一つの基本形式
日本軍:海軍だけでも三十種類の機関銃が作られ、弾薬に至っては百二十種類

・ゼロ戦
匠の技に頼りすぎてぎりぎりのバランス調整がなされているため、拡張性に乏しかった。

・魚雷の誘導制御
アメリカ軍:戦争中期に実用化
日本軍:人間が乗り込んで制御

・直接性能主義
兵の体力、補給の容易さ、機動性、故障の起こりにくさ、他の兵器と一緒に用いたときの相乗効果などを総合的に考えた性能が追求された形跡はほとんどない。
アメリカ軍:機動性バツグンの自走砲が常識
日本軍:飛距離、火力だけが凄い大砲を、人が木製の車輪で荷車のように運ぶ

他にも陸軍と海軍の仲が悪いとかあるけど、略。

・日本軍の凄いところ
わずか70年あまりで、自前の航空機、空母、潜水艦を作った。
戦艦大和の砲塔は凄い制御技術の結晶。
ジェット機、ロケット、後退翼という宇宙開発につながる技術を実用化レベルにした。

3章、4章はまとめ。まとめて省略。というか丸写し状態になっているのを改善しないといかん。ちょっとメンドイ。
とにかく、理論、システム、ソフトウェア。この3つが軽視されているのはまずい。
読書メモもいくらかシステマチックな方法を考えるほうがいいかもしれん。システマチック言いたかっただけだけど。

電子マネーの規格乱立とか、PCゲームのMODとか、そういうのが第三の科学革命に追いつききれていないことの証拠かな。ふと思う。普遍化か規格化か知らないけど、なんかちゃんと出来ていない。
レグザリンクとかメーカー統一したシステムは、逆に第三の科学革命をちょっと理解している感じ?でもSONYは独自規格が好きだし、うーん。
とにかく興味深い本。

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